マイホーム借上げ制度の解説

「 移住・住みかえ支援機構(JTI:Japan Trans-housing Institute)」が実施している「マイホーム借上げ制度」とは、シニア(50歳以上)が所有するマイホーム(住宅)をJTIが借上げ、シニアに安定した家賃収入を保証するものである。普通の賃貸借物件と異なる、この制度について解説する。

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マイホーム借上げ制度とは

マイホーム借上げ制度(以下、「本借上げ制度」と言う。)は、JTIがシニアの住宅所有者(以下、「オーナー」と言う。)から住宅を借上げ、それを第三者に転貸し、転貸収入の中から借上げ賃料をオーナーに支払う仕組みである。オーナーとJTIとの間、及びJTIと入居者の間でそれぞれ賃貸借契約が締結されることになる。よって、オーナーと入居者(転借人)は直接関わることはない。

本借上げ制度の売りは、空き家になっても規定の家賃がオーナーに支払われる家賃保証があることである。

以下に、「対象物件」、「借上げ形態」、「オーナーの都合に沿った契約終了ができる仕組み」、「利用要件と特例制度」、「家賃の設定金額」について述べる。

対象物件

日本国内の住宅で、一戸建て以外にもマンション等も対象であるが、事業用物件は対象外である。事業用物件としては、店舗・事務所等だけでなく、賃料を得る目的で建築された貸家・アパート・賃貸マンション等も該当する。だからと言って、本借上げ制度を利用する前から既に賃貸借している住宅は必ず対象外になる訳でもない。本人が住む目的で購入し住んだ実績があったり、あるいは本人が住んだことがなくても親が住んでいた実家を相続し貸家として利用している住宅は、JTIで言う事業用物件に当たらなく本借上げ制度の対象になる。

事業用物件に当たるか否かの判断に不安がある場合は、直接JTI(03-5211-0772)に確認されたし。

借上げ形態

借上げの形態には、次の2種類がある。

終身型

対象住宅に問題がない限り、オーナーと共同生活者の2人が死亡するまで借上げる※1形態。

期間指定型

オーナーが予め指定した期間で借上げる形態。

期間指定型になるケースとして定期借地権が挙げられる。定期借地権が設定されている土地に建築された住宅の場合は、土地を借りている期間が満了すると土地所有者に必ず返還しなければならない。このケースのように、貸家として貸せる期間の終了日が確定している場合は期間指定型となる。

オーナーの都合に沿った契約終了ができる仕組み

一般的に建物賃貸借契約は貸主側から終了させることが難しいと言われているが、本借上げ制度ではオーナーが自分の都合で終了させたくなった場合は、ある程度の期間を要することもあるものの終了させることができる。

その仕組みを理解するには2種類の建物賃貸借契約について把握している必要があるので、本題に入る前に説明しておく。建物賃貸借契約には一般的に広く利用されている「普通建物賃貸借契約」の他にも「定期建物賃貸借契約」があり、これら契約の特徴は次のとおり。

普通建物賃貸借契約

この契約を締結していると、貸主の都合で契約を終了させたい場合は、貸主にとって厳しい正当事由が必要となり、容易に契約終了できないのが実状である。従って、貸主に正当事由が無い限り、あるいは入居者が賃料滞納等の契約違反をしない限り、入居者が借り続けたいと思えば明け渡して貰うことができない。

参考までに、この契約には、「期間の定めのない」契約と「期間の定めがある」契約がある。例えば「期間の定めがある」契約を締結し、契約で定めた期間が訪れるタイミングで貸主が更新拒絶をすればスムーズに明渡して貰えると思うかもしれないが、この場合でも正当事由が必要となり、貸主から契約を終了させるのは「期間の定めのない」契約と同様に容易でない。つまり、「期間の定めがある」契約は期間が満了しても更新を前提としている。

このように、普通建物賃貸借契約が締結されていると、正当事由が不要な借主から更新拒絶あるいは解約を申入れがない限り、明け渡して貰うことが難しくなっている理由は、弱い立場になり易い借主の保護を図るためである。

定期建物賃貸借契約

上記の普通建物賃貸借契約では、ある一定期間だけ貸したい貸主は運用し難く、貸主の不利益が発生することがあるため、定めた期間が訪れると更新されることなく必ず契約が終了する定期建物賃貸借契約が存在する(2000年3月施行)。定めた期間が訪れた時、例え貸主・借主が共に賃貸借を継続したい意向があっても、更新できないので契約が終了することになり、当事者の意向を叶えるには新たに再契約を締結するしかない。

なお、更新のない契約であるものの、期間が満了すると自動的に終了するのでなく、貸主は借主に対し、期間満了の1年前から6ヶ月前までに契約が終了する旨を通知する必要がある。この期間内の通知を怠ると期間満了していても、貸主は借主に明渡しを求めることができない。但し、その後通知すれば、通知日から6ヶ月の経過で契約終了を主張できるようになる。

また、貸主・借主共に、原則中途解約はできない

以上を踏まえ本題に入る。なお、解説内容には私独自の解釈で推測した部分もあるものの、間違ったことは述べていないと判断している。

先に述べたとおり、オーナーとJTIとの間、及びJTIと入居者の間でそれぞれ賃貸借契約が締結され、JTIがオーナーから借上げる形態には、「終身型」と「期間指定型」がある。本借上げ制度では、借上げ形態により賃貸借契約の種類や契約期間が次のように異なる。

終身型の借上げの場合
オーナーとJTI間

期間の定めのない普通建物賃貸借契約

JTIと入居者間

3~10年でオーナーが指定する期間の定期建物賃貸借契約

期間指定型の借上げの場合
オーナーとJTI間

3~10年でオーナーが指定する期間の定期建物賃貸借契約

JTIと入居者間

オーナーの賃貸借契約が終了するまでの期間の定期建物賃貸借契約

終身型の借上げの場合は、オーナーとJTIとの間では期間の定めのない普通建物賃貸借契約を締結しているので、本来であれば貸主であるオーナーが解約を申し入れる場合は、借主であるJTIが借り続けたい意向があれば、それに反して解約しようとすると正当事由が必要になる。しかし本借上げ制度の場合は、オーナーに正当事由がなくてもJTIは中途解約を認めている。但し、JTIは入居者との間で定期建物賃貸借契約を締結しているため、JTIが入居者に対し中途解約するには正当事由が必要になることから、入居者の定期賃貸借が満了したタイミングでオーナーの中途解約を認めている。

なお、オーナーが解約を申し入れた時が入居者の定期建物賃貸借契約満了の6ヶ月未満である場合は、JTIが現入居者と再度定期建物賃貸借契約しているか否か、あるいは別の入居者と新規定期建物賃貸借契約を締結しているか否かにより、解約日が異なってくる。既存契約の次の契約締結前であれば、借地借家法の規定に則り申入れから6ヶ月後に解約することができるが、次の契約締結後であればその契約が満了するまで待たなければならない。

以上により、オーナーがJTIへ中途解約を申し入れても、ある程度の期間を経過しないと解約できないものの、中途解約したければ正当事由なしに行うことができる※2仕組みになっている。

一方、期間指定型の借上げの場合は、オーナー・JTIの契約終了とJTI・入居者の契約終了が同じタイミングになるため、オーナーが指定した期間満了後はJTIと入居者との間の賃貸借契約が存在していない。よって、オーナーの都合に合った契約終了が可能となる。

参考までに、定期建物賃貸借契約を締結している入居者が中途解約したい場合は、入居者が解約日の1ヶ月前までにJTIにその旨を通知すれば良い。この場合、借地借家法の中途解約要件を満たしていなくても、JTIは入居者の中途解約を認めている。

利用要件と特例制度

オーナーが本借上げ制度を利用するには、次の要件がある一方で、その要件を免除する特例制度もある。

年齢要件

オーナーは50歳以上である必要がある。

なお、共有物件の場合は、所有者の内の1人が50歳以上であれば、本借上げ制度を利用できる。参考までに、オーナーが日本在住であれば国籍を問われなく、日本人であれば海外在住でも問題ない。

また、新築住宅に限った話であるが、50歳以上の年齢制限を排除できる制度もある。

それは、JTIが「かせるストック」として認定した物件が対象で、JTIが認める外部の耐久・耐震性基準を満たし、長期にわたるメンテナンス体制を備えた新築住宅である必要がある。この認定を受けると、オーナーの年齢に関係なく簡単な手続きでいつでも本借上げ制度を利用できる。

その他要件

上記の年令要件以外にも次の要件がある。

  • 本借上げ制度対象の住宅や宅地に抵当権等の担保が設定されている場合は、原則抵当権等を外すか、あるいはJTI協賛金融機関等への借り換えが必要有り。 かつ
  • 破産や民事再生の申し立て、強制執行を受けていないこと。 かつ
  • 対象住宅に対し、固定資産税の滞納、その他不動産関連の支払いが滞っていないこと。 かつ
  • オーナー負担で火災保険に加入すること。

家賃の設定金額

本借上げ制度に於ける家賃がどの程度に設定されるかを解説する。

本借上げ制度では複数の異なる意味の「家賃」が登場することから、解説に当たり混乱しないように各家賃の名称を次のように定める。

  • 相場家賃 右矢印 本借上げ制度を利用しない普通の相場の家賃
  • 募集家賃 右矢印 JTIが入居者を募集する時に設定する家賃
  • 入居者家賃 右矢印 入居者がJTIに支払う家賃
  • オーナー家賃 右矢印 入居状態の時にJTIがオーナーに支払う家賃
  • 空室時保証賃料 右矢印 空家状態の時にJTIがオーナーに支払う家賃

JTIは、まずは相場家賃を調査し、その金額をベースにして上記のその他家賃を設定するが、これら設定金額は将来に渡って維持されない。と言うのも、JTIは入居者と締結した契約が終了するタイミング、つまり空家になり募集するタイミング及び契約期間が満了し同一入居者と再契約をするタイミングで見直しを掛けるからである。

一般論として貸家の家賃は、その貸家の経年劣化に伴い下がる傾向がある。従って、募集等のタイミングで見直しを掛けるとベースとなる相場家賃は前回より下がった金額になり、それに応じて、その他家賃の金額も下がった金額になる傾向がある。

参考までに、空室時保証賃料について捕捉しておく。

空室時保証賃料は、空家になり募集を掛けるタイミングで見直され金額が変更されるものの、その設定金額が反映されるのは、見直された時の空家期間でなく、その次の空家期間となる。つまり、オーナーが本借上げ制度に申し込むと、JTIは相場家賃を調査し、それをベースにして募集賃料や空室時保証賃料等を設定するが、この時設定した空室時保証賃料の金額は、初回の募集で入居した借主が退去し空家になった時の保証金額となる。次に初回の入居者の退去したタイミングで募集賃料や空室時保証賃料等の見直しを行い、新たに2回目の金額を設定し、2回目の募集が行われる。この2回目に設定した空室時保証賃料は、同様に2回目の募集で入居した借主が退去し空家になった時の保証金額となる。

なお、この家賃保証は、オーナーが本借上げ制度に申し込んで行われる初回の募集期間の空家状態は対象外である。

JTIが設定する家賃の金額は、次のように決定して行く。

  1. 相場家賃

    本借上げ制度を利用していない近隣の類似した貸家の家賃等を元に、相場家賃を調査する。

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  2. 募集家賃

    相場家賃をベースに、ある程度幅を持たせた募集家賃を設定する。

    目安となる募集家賃の幅は、相場家賃の同額から相場家賃の20%引きの範囲となる。相場家賃より低目に設定されるのは、更新のない定期建物賃貸借契約は入居者にとってマイナス要因になるからである。

    この幅内で実際の募集家賃を決定し、募集を掛けることになる。募集をかけたものの成約に苦労するようであれば、募集家賃の幅内で実際の募集家賃を下げることになる。

    下矢印
  3. 入居者家賃

    入居者が決まった時の実際の募集家賃が、入居者家賃となる。

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  4. オーナー家賃

    入居者家賃の15%引きが、オーナー家賃となる。15%の内訳は、JTI運営費10%と建物管理費5%である。

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  5. 空室時保証賃料

    幅を持たせて設定した募集家賃の下限金額の15%引きが、空室時保証賃料となる。つまり、「相場家賃」×(1-20%)×(1-15%) である。

    なお、空室時保証賃料には上限額があり、上記計算結果が127,500円を超える場合は「127,500円」となる。

相場家賃 100,000円
幅を持たせた
募集家賃
100,000円
~80,000円
入居者家賃 90,000円
オーナー家賃 76,500円
空室時保証賃料 68,000円

なお、オーナー家賃や空室時保証賃料は上記で述べたとおり経年劣化等に伴い下落傾向となる。そこでJTIではオーナーが受け取る家賃の下落に歯止めを掛ける「定額最低保証賃料」と言う制度を設けている。本借上げ制度の申込み時に、この最低保証制度に申し込んでおけば、変動するオーナー家賃や空室時保証賃料が将来定額最低保証賃料を下回る事態が発生した場合は定額最低保証賃料が支払われることになる。

ただ、全てのオーナーがこの最低保証制度に申し込める訳でなく、次の要件と保証期間がある。

要件

新・新耐震基準※3を満たした住宅であること。

保証期間

35年 - 築年数

定額最低保証賃料がどの程度の金額になるかは気になるところであるが、目安として本借上げ制度の申込み時の相場家賃の5割程度のようである。

また、この最低保証制度の利用目的の実体は、下落に歯止めを掛ける本来の目的でなく、ローン目的に重点を置いているオーナーが多いようである。と言うのは、空室時保証賃料が定額最低保証賃料を下回る事態が発生し難く、またこの最低保証制度に申し込んであると、この最低保証額と保証期間に応じた借入れを行えるJTI提携金融機関があるからである。

普通の賃貸借物件との比較

以下に、「マイホーム借上げ制度」の物件(以下、「借上げ物件」と言う。)と通常不動産仲介業者から紹介される普通の物件(契約の種類は「普通建物賃貸借契約」となり、以下「普通物件」と言う。)との比較をする。

比較項目は、「空家リスク」、「家賃の金額」、「初期費用」、「その他費用」、「地震に対する安心度」、「期間満了後も借り続けるための費用」、「中途解約の容易さ」、「募集手段」である。

空家リスク

借上げ物件では最初の入居者が決定した以降は空家になっても規定の賃料が支払われることになる。一方、普通物件では当然のことながら空家になれば家賃収入が全く入らなくなる。

よって借上げ物件のオーナーには、安定した家賃収入が保証され、空家リスクが無くなるメリットがある。

家賃の金額

家賃の金額は、借上げ物件が普通物件に比べ低い。このことは入居者のメリットであり、オーナーのデメリットである。

金額にどの程度の差がでてくるかは、先述のコチラを参照されたし。

初期費用

契約締結時に入居者が用意しなければならない初期費用の違いは次のとおり。

普通物件では初期費用として敷金・礼金を用意する必要がある。一方、借上げ物件では敷金・礼金は不要であるが、普通物件にないJTIへの事務手数料10,000円(税別)が必要になる。

礼金は退去時に戻ってこないが、敷金は入居者の過失で傷めた補修費用等を差し引いて、退去時に戻ってくる。また、地域によって異なるかもしれないが、私の地元では礼金不要の普通物件が多くなっている。

礼金不要の普通物件と借上げ物件を比較した場合は、敷金が退去時に戻ることを考慮すれば実質差がない。ただ、借上げ物件は事務手数料(1万円)より遥かに高額となる敷金が不要なので、入居者にとって賃貸借契約締結時に用意しなければならない初期費用の金額を抑えることができるメリットがある。

なお、仲介手数料、火災保険料保証料は、どちらの物件でも入居者が支払う必要があるので、差異なし。

その他費用

オーナーが本借上げ制度を利用するためには、普通物件では発生しない次の費用が掛かる。

申込み金

オーナーが本借上げ制度の利用を正式に申し込む時は、申込み金17,000円(税別)が必要になる。なお、この費用は申込み以降に行われる建物耐震診断の結果を見て本借上げ制度をキャンセルすることになっても返還されない。

建物診断費用※4

建物診断とは、本借上げ制度基準に適合している住宅か否かを判断するための調査である。建物診断には、「耐震診断」と「劣化診断」とがあり、総額45,000円(税別)となる。なお、新耐震基準※3以降の住宅で大規模な増改築などがない場合は耐震診断は不要となり劣化診断のみとなるが、費用は変わらない(45,000円)。

補強改修費用※4

建物診断の結果、耐震補強やその他の改修が必要と判断されれば、その工事を実施しないと本借上げ制度を利用できなく、その費用はオーナー負担となる。但し、私は劣化診断の内容を把握していないものの、劣化診断による改修工事は、本借上げ制度を利用せず普通物件として貸し出す場合もオーナーが当然行うべき工事に該当すると思われ、差異はないと見るべきである。

なお、私自身、耐震診断や耐震工事を受けたことがなく殆ど知識がないのでJTIに確認したところ、旧耐震基準※3の住宅は、構造上の問題により耐震診断を受診するまでもなく耐震工事が必要になるようだ。ちなみに私の実家は、旧耐震基準の住宅で、延床面積321㎡と大き目の住宅である。この住宅の耐震補強工事を受けた場合の費用をJTIに聞いてみたところ、一戸建の家が建つような金額になり、本借上げ制度を利用せず普通物件として運用した方が良いとの回答であった。このことから、旧耐震基準の住宅に対し耐震補強工事を実施しようとすると、部分的な工事にならなく全面的な工事による高額な費用となり、本借上げ制度に向かない住宅と判断した方が良さそうだ。

また、退去時のハウスクリーニング費は、普通物件の場合は一般的に入居者がクリーニング業者のハウスクリーニング費を負担し、借上げ物件の場合も入居者が一律1,000円/㎡を負担することからほぼ同等である。

地震に対する安心度

旧耐震基準の貸家は、普通物件では多く見かけるが、借上げ物件では耐震補強が必要になることから非常に少ない。もし、旧耐震基準の普通物件と借上げ物件のどちらかを借りることになるなら、耐震補強された借上げ物件がお勧めなのは言うまでもない。

期間満了後も借り続けるための費用

普通物件では、契約期間2年が一般的で、期間満了後も借り続けるには更新手数料が発生する。一概に言えないが、私の地元では1万円~月額家賃の半額である。

一方、本借上げ物件は定期建物賃貸借契約であり、契約満了後も借り続けるには再度新たな契約を締結することになるので、初回の契約と同様に仲介手数料として家賃の1ヶ月分とJTIへの事務手数料として1万円が発生する。また、契約期間は、中には3年を超える物件もあるが、大部分は3年間である。

以上から、一般論として期間満了後も借り続けるための年間当たりの費用負担は、普通物件より借上げ物件の方が大きい。

中途解約の容易さ

中途解約の容易さについて、普通物件と借上げ物件それぞれに対し、オーナーと入居者の立場から述べる。

普通物件
オーナーからの申出

オーナーからの中途解約は正当事由が必要であるため、容易なことでない。一般的には期間の定めのある賃貸借契約を締結しているが、例え期間満了のタイミングで更新を拒絶し契約を終了させる場合でも正当事由が必要になるため同様に容易でない。

入居者からの申出

解約理由は問われることがなく、また一般的には特約により解約する1ヶ月前に申出れば良いので容易である。

借上げ物件
オーナーからの申出

中途解約する場合は、JTIと入居者の間は定期建物賃貸借契約を締結していることから入居者の定期建物賃貸借契約が満了するまで待つ必要があるが、正当事由が不要なので、普通物件に比べ容易である。また、入居者の定期建物賃貸借契約の満了時に合わせた中途解約も当然容易である。

入居者からの申出

JTIと入居者の間は定期建物賃貸借契約を締結しているが、入居者が解約日の1ヶ月前までにJTIに申出れば良く、また解約理由を問われることもないので容易である。

募集手段

借上げ物件を扱える業者は、宅地建物取引業者であるが、宅建業者ならどの業者も扱えるのでなく、JTIの協賛事業者になっている必要があり、ごく限られた宅建業者となる。そうなると、オーナーから見れば、普通物件に比べ広く募集してもらえないのではと思う方もいるかもしれないが、JTI側の仲介を行える業者が限られているだけであり、募集手段は普通物件と同じである。JTI側の仲介業者は、来店したお客に紹介するだけでなく、所属する不動産協会サイト・自社サイト・場合によっては民間の不動産ポータルサイト等のネット上で、あるいは紙媒体の広告で、不特定多数に紹介することになるからである。

なお、借上げ物件はJTIサイトでも紹介されるが、JTIサイトのページが検索エンジンによる「地域名+不動産関連用語」の複合キーワード検索で上位表示される程SEO的に強くなく、また「JTI」や「マイホーム借上げ制度」自体一般の人に周知されているとは思えなく、つまり「JTI」又は「マイホーム借上げ制度」とセットにした複合キーワードで検索する人は希であると思われることから、このサイトの効果は弱いと推測する。

手続きの流れ

家賃保証に至るまでの一般的な手続きの流れは次のとおりである。

  1. 資料請求(無料)

    オーナーがJTIに電話(03-5211-0772)して、資料を請求する。

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  2. JTIの「情報会員」に登録(無料)

    届いた資料の中にある「情報会員登録カード」用紙に必要事項を記入し、郵便またはファクスで送る。

    なお、JTI公式サイト内から、この用紙をダウンロードすることができるので、「1番目リスト 」をパスして「2番目リスト 」から始めることも可能。

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  3. ハウジングライフプランナーに事前相談(無料)

    ハウジングライフプランナーは、本借上げ制度の説明だけでなく、住み替え全般に対してもアドバイスを行う。

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  4. 家賃査定(無料)

    宅地建物取引業の資格を持つJTI協賛事業者が実際に建物を見た上で査定を行う。

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  5. 制度利用申込書の提出

    本借上げ制度を利用したい意思が固まったら、JTIに対し申込金[事務手数料17,000円(税別)]を支払い、制度利用申込書を提出することにより正式な申し込みとなる。

    この時、ハウジングライフプランナーが、改めて本借上げ制度について詳しく説明をする。

    なお、この申込書提出前であれば、本借上げ制度を利用しない普通の賃貸借を検討していても問題ないが、この申込み以降は普通の賃貸借を諦める必要がある。

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  6. 建物診断(と工事)の実施

    建物診断として、耐震診断と劣化診断を実施する。費用[45,000円(税別)]はオーナー負担となる。

    診断結果により、JTIが補強・改修工事が必要と判断すれば、オーナー負担で工事を実施する必要あり。

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  7. 入居者募集

    JTIが指定する宅建業者(JTI協賛事業者)が入居者を募集する。

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  8. 入居者が決定

    初めての入居者が内定すると、JTIからオーナーに借上げ条件を記載した承認書が送られ、これで契約手続きは完了する。

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  9. 入居開始

    入居者が入居した日からオーナーに家賃が支払われ、その後に空家になれば空室時保証賃料が支払われる。

所見

「マイホーム借上げ制度」は、旧耐震基準の建物に対しては補強工事費用の面で相当厳しい制度である。しかし、個々の物件・各自のおかれた状況等によっては、これまでにない魅力ある制度となる。興味の持たれた方は、まずJTIの「情報会員」に登録し、専門のハウジングライフプランナーに相談しながら、費用の掛からない上記「手続きの流れ」の「 4番目リスト 」まで進めた上で、正式に申込むか否かの最終的な判断をすれば良いのではと考える。

last update on

written on Jan.18,2015