相続不動産の評価方法の解説

本編は、一般の人には馴染みの薄い相続不動産評価方法の解説であり、評価方法を理解することにより見えてくる相続税の節税効果についても解説する。

本編構成は次のとおりである。

一物四価」、「土地(地目別)の評価方法」、「建物の評価方法」、「賃貸不動産の評価方法」、「小規模宅地等の特例」、「モデルケースによる不動産評価手順」、「節税対策と効果

一物四価

土地の価格は「一物四価」と言われるように、次の複数の価格がある。

実勢価格

実際の売買取引時の価格であり、次の2つの意味で使われている。

  • 売買が成立した土地に対する成約価格のこと。
  • 売買が成立していない土地に対し、類似した土地の過去の成約価格等から査定する相場価格のこと
公示価格

国土交通省が毎年3月に公表するその年の1月1日時点に於ける全国の標準地の㎡単価である。

次の役割がある。

  • 一般の土地の取引価格に対する指標の提供
  • 公共用地の取得価格の算定の規準
  • 相続税評価、固定資産税評価の規準

参考までに、公示価格の補完的な役割のある「基準地価」もある。

これは、都道府県が毎年9月に公表するその年の7月1日時点に於ける全国の基準地の㎡単価である。この土地の価格も存在するので「一物五価」と言うこともある。

相続税路線価(相続税評価額)

国税庁が毎年7月に公表するその年の1月1日時点に於ける道路(路線)に面する土地の㎡単価が「相続税路線価」であり、これをベースにして算出した土地全体の評価額が「相続税評価額」である。

相続税、贈与税の計算の時に適用される価格であり、 相続税路線価は公示価格の80%程度である。

固定資産税路線価(固定資産税評価額)

市区町村が3年毎の4月に公表するその年の1月1日時点に於ける道路(路線)に面する土地の㎡単価が「固定資産税路線価」であり、これをベースにして算出した土地全体の評価額が「固定資産税評価額」である。

固定資産税、不動産取得税等の計算の時に適用される価格であり、固定資産税路線価は公示価格の70%程度である。

なお、一般的に「路線価」と言えば「相続税路線価」を指し、本解説上の「路線価」も「相続税路線価」を指している。ただ経験上、市区町村の税務課職員が「路線価」と発言すれば「固定資産税路線価」を指している。

土地(地目別)の評価方法

相続税に於ける土地の評価方法は地目毎に定まり、また地目は登記簿上の地目でなく、相続開始日の現況によって判定される。

主な地目に於ける不動産評価方法は次のとおりである。

宅地

対象宅地に路線価が設定されているか否かで、評価方法が異なる。

路線価が設定されている場合

「路線価方式」となる。つまり、路線価に基づいて、次の計算式で評価額を求める。

評価額
路線価を調整率
補正した㎡単価
×
土地面積
路線価が設定されていない場合

「倍率方式」となる。つまり、固定資産税評価額に基づいて、次の計算式で評価額を求める。

評価額
固定資産税
評価額
×
倍率

なお、宅地(建物が建っている土地)に於いて賃貸借が絡んでくると評価額を減額できるので、「賃貸不動産の評価方法」を参照されたし。

参考までに、路線価方式は宅地に面する道路によって地価の金額の差が大きい市街地の評価に適し、一方倍率方式は比較的に差が小さい郊外宅地や農村宅地等に適している。従って、原則として路線価方式は市街地を形成する地域の宅地の評価に使用し、倍率方式はその他地域の宅地の評価に使用している。

また、路線価は主要な市街地の道路にしか設定されていないため、路線価のない宅地を評価するときは、代替方法として固定資産税評価額を使っているが、この固定資産税評価額は路線価より低く、そのままの価格で評価すると適切でないので、倍率を乗じて調整している。

上記計算式の各項目の情報入手先等は次のとおりである。

この判断は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトの該当市町村の「評価倍率表」へ行き、査定対象の宅地の地域が、「路線」と記載されているか否かで判断する。つまり「路線」と記載されていれば、路線価が設定されていることになり「路線価方式」を採用し、数値が記載されていれば、路線価が設定されていないことになり「倍率方式」を採用する。なお、この数値が「倍率方式」で使用する倍率値となる。

路線価

路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトの該当都道府県の「路線価図」へ行き、査定対象の土地に接する道路に記載された数値が、㎡当たりの路線価(千円単位)である。

調整率

調整率に関しては、後述の「 親階層(青色)の4番目リスト 路線価の調整」を参照されたし。

土地面積

毎年5月に市町村役場から郵送される「固定資産税 納税通知書及び課税説明書」に記載されている「現況地積」の値が土地面積(㎡)である。

もし、紛失していれば有償になるが、市町村役場や法務局から入手可能である。市町村役場であれば、「名寄帳」(私が住んでるところでは、その市町村内で所有する全不動産に対し300円)に、法務局であれば「登記事項要約書(登記簿抄本:1不動産当たり450円)や「登記事項証明書」(登記簿謄本:1不動産当たり600円)に記載されており、情報入手だけであれば市町村役場の方が安く、所有物件が多いと馬鹿にできない価格差になる。

なお、概算の実測値を知りたければ、「便利ツール」ページの「土地の面積」を利用されたし。

固定資産税評価額

これも、毎年5月に市町村役場から郵送される「固定資産税 納税通知書及び課税説明書」に記載されている「評価額」の値が固定資産税評価額である。

もし、紛失していれば有償になるが市町村役場の「名寄帳」で、情報を入手できる。

倍率

上記「路線価の設定有無の判断」の解説を参照されたし。

農地(田又は畑)

地目は現況で判断されるので、例えば登記簿上の地目が農地(田又は畑)であっても、長年放置していたため雑草等が生育し容易に農地に復元できない状況の場合、原野又は雑種地と判定される。しかし、放置された状態であっても、客観的に見てその現状が耕作の目的と認められる土地(現在は耕作されていなくても耕作しようとすればいつでも耕作できるような休耕地や不耕作地も含む)であれば、農地と判定される。

現況農地の評価方法は、農地が存在する環境により次の3種類に分かれる。

市街地農地の場合

「宅地比準方式」となる。つまり、対象農地が宅地であるとした場合の評価から、その農地を宅地に転用するための造成費を引いた金額が評価額になる。

評価額
=(
宅地とした場合の
1㎡当たりの価格
1㎡当たり
の造成費
)×
土地面積
市街地周辺農地の場合

対象農地が市街地農地とした場合の評価の80%が評価額となる。

評価額
=(
宅地とした場合の
1㎡当たりの価格
1㎡当たり
の造成費
)×
土地面積
×
80%
上記以外の農地の場合

「倍率方式」となる。つまり、固定資産税評価額に基づいて、次の計算式で評価額を求める。

評価額
固定資産税
評価額
×
倍率

なお、対象農地がどの評価方法を適用すれば良いかの具体的な判断は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトの該当市町村の「評価倍率表」へ飛び、査定対象の田または畑の地域が、「市 比準」と記載されてば「市街地農地」となり、「周 比準」と記載されてば「市街地周辺農地」となり、数値で記載されていれば、それら以外の農地(倍率方式)となる。また、この数値が「倍率方式」で使用する倍率値となる。

雑種地

対象雑種地の現況等により評価するので一概には言えないが、例えば青空駐車場や資材置場の場合は、宅地あるいは宅地比準方式で評価するようである(個々の土地の評価方法に関しては、税務署に確認されたし)。

建物の評価方法

相続税に於ける建物の評価は土地と違い単純で、固定資産税評価額が相続建物の評価額となる。

評価額
固定資産税
評価額

なお、賃貸借が絡んでくると評価額を減額できるので、「土地・建物を所有し、建物を貸している場合」を参照されたし。

賃貸不動産の評価方法

土地上に建物が建っていて、かつ賃貸借が絡んでくると、次のように評価額を減額できる。なお、建物が存在しない土地を建築不可の資材置場等の用途として貸している場合は、建物が存在しない賃貸借なので、評価額を減額できない。

土地・建物を所有し、建物を貸している場合

土地(貸家建付地

自用地としての宅地評価額から、その自用地としての価額に「借地権割合×借家権割合」の値を掛けた額を引いた金額が土地の価額額となる。これを「自用地評価額」でくくり出すと次の計算式となる。

貸家建付地
評価額
自用地
評価額
×(1-
借地権
割合
×
貸家権
割合
貸家

貸家の評価額は、固定資税産評価額から、その家屋の借家権割合分を控除した金額が貸家の評価額になる。

なお、借家権割合は私が住んでいる石川県では30%であり、他の都道府県も同様の30%と思っているが、都道府県毎に定まっているので石川県以外については管轄の税務署に確認されたし。また、家屋を借りている人には借家権があるが、借家権の価額は、その権利が権利金等の名称をもって取引される慣行がある地域でない限り評価しない。

貸家
評価額
固定資産税
評価額
×(1-
借家権
割合

土地を貸し、土地を借りている人が建物を所有している場合(土地と建物の所有者が別)

自用地としての評価額に借地権割合を乗じた金額が、借地権の評価額となる。

借地権
評価額
自用地
評価額
×
借地権
割合
貸宅地

自用地としての評価額から借地権の評価額を引いた金額が、貸宅地の評価額となる。

貸宅地
評価額
自用地
評価額
×(1-
借地権
割合

小規模宅地等の特例

被相続人が居住又は事業に利用していた土地は、相続人にとっても生活基盤を支える重要な土地であり、通常の相続税を掛けてしまうと生活が脅かされ、場合によっては納付資金を捻出するために土地を売却せざるえいない事態も発生しかねない。そのため、このような重要な土地に対し評価額(課税価格)を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」が設けられている。

なお、本特例解説のベースになっているは、税務署が提供している冊子「相続税の申告のしかた」であるが、冊子を最初読んだ時、何を述べたいのか私自身が理解できなく、税務署に質問をし、それなりに理解した上で私なりに分かり易く纏めたのが本特例解説である。従って、本解説には誤りがないと思っているものの、気になる方は「相続税の申告のしかた」(平成30年分用)のP.16(「(4) 小規模宅地等の特例」)以降の文面を参照されたし。

特例の概要

はじめに...小規模宅地等の特例は、適用を受けるための要件等が細かく定められているため、理解し難い面がある。大雑把な知識で十分な方の場合、詳しく解説すると読む気をなくすので、この概要の理解で十分である。もっと詳しく知りたい方は、後述の『特例の詳細』を閲覧されたし。

この特例の概要は、被相続人が所有していた宅地の評価額を減額するものである。減額できる宅地の限度面積と減額割合が利用区分(宅地の用途で分類される区分)毎に定まっていて、正確性に欠けるものの次表のとおりである。

宅地の利用区分 限度面積 減額割合
自宅用 330㎡ 80%
事業用(貸付を除く) 400㎡ 80%
貸付用 200㎡ 50%

なお、「小規模宅地等の特例」の適用を受けるには、申告書の提出が要件となる。従って、特例により課税価格の合計額が基礎控除額内に収まったとしても、相続税を納付する必要がないものの申告書の提出が必要となる。

特例の詳細

予備知識

この後の詳細解説を読むに当たり、予備知識として次の語句の意味を頭に入れておくと読み易くなる。

建物等*

建物又は構築物のこと。構築物の例として、駐車場のアスファルト舗装やフェンス等が挙げられる。

宅地等

建物等の敷地となっている土地又は土地の権利(借地権等)である。よって、建物の敷地だけでなく、アスファルト舗装やフェンス等の構築物がある駐車場の敷地も対象である。

小規模宅地等

被相続人が所有していた宅地等に対し、評価額を減額できる一定面積までの土地のこと。

親族

配偶者、6親等以内の血族及び3親等以内の姻族のこと。

生計を一にする

『せいけいをいつにする』と読む。

同居している(但し、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は対象外)、もしくは別居であっても送金を行なうなど、生活費に一体性が見られる状態のこと。

生計一親族*

被相続人から見た生計を一にする親族のこと。

被相続人等

被相続人又は、相続開始直前に於ける生計一親族のこと。

一定の法人

相続開始直前に於いて、被相続人及び被相続人の親族等が、発行株式の総数又は出資の総額の50%超えを有している法人のこと。簡単に言えば同族会社の一種。

貸付事業

不動産貸付業、駐車場業、駐輪場業のこと。なお、事業と称するほどでなくても、対価を得て継続的に行っていれば対象である。

賃貸借*

対価(賃料)が発生する貸借のこと。

対価が発生しても、相当な対価でなければ使用貸借と見なされる可能性有り。例えば、固定資産税その他必要経費程度の対価では、相当な対価と見なされない。

賃貸借承継要件*

特例の適用を受ける要件の1つで、相続開始直前に於いて、宅地等所有者と建物等利用者間の貸借が賃貸借であり、相続人が相続税の申告期限までに賃貸借を引継ぎ、かつ申告期限まで賃貸借を行っていること。

参考まで、建物等利用者が宅地等の所有者でない場合、両者の間で貸借が発生していることになり、その場合の貸借の種類を要件にしている。例えば、建物の所有者が土地の所有者である場合、建物利用者はその建物に対し相当な対価(家賃)を支払っていれば賃貸借になり、また建物の所有者が建物利用者である場合、建物利用者はその土地に対し相当な対価(地代)を支払っていれば賃貸借になる。

使用貸借要件*

特例の適用を受ける要件の1つで、相続開始直前に於いて、宅地等所有者と建物等利用者(貸付事業の場合は、建物等を貸付けている者)間の貸借が使用貸借であること。

参考まで、建物等利用者が宅地等の所有者でない場合、両者の間で貸借が発生していることになり、その場合の貸借の種類を要件にしている。例えば、建物の所有者が土地の所有者である場合、建物利用者はその建物に対し相当な対価(家賃)を支払っていなければ使用貸借になり、また建物の所有者が建物利用者である場合、建物利用者はその土地に対し相当な対価(地代)を支払っていなければ使用貸借になる。

居住継続要件*

特例の適用を受ける要件の1つで、相続開始直前から居住していた対象宅地上の建物に、相続税の申告期限まで引続き居住していること。

事業承継要件

特例の適用を受ける要件の1つで、対象宅地等の上で営まれていた(あるいは宅地等に係る)被相続人の事業を相続税の申告期限までに引継ぎ、かつ申告期限までその事業を営んでいること。

事業継続要件

特例の適用を受ける要件の1つで、相続開始直前から対象宅地等の上で営まれていた(あるいは宅地等に係る)事業を、同一事業主が相続税の申告期限まで引続きその事業を営んでいること。

保有継続要件

特例の適用を受ける要件の1つで、相続税の申告期限まで対象宅地等を所有していること。つまり申告期限までに、遺産分割が完了しかつ売却していない必要がある。

法人役員要件

特例の適用を受ける要件の1つで、相続税の申告期限に於いて、宅地等の取得者が対象法人の役員であること。

利用区分毎の要件

特例の適用を受けられる宅地等は、被相続人が所有していた宅地等であることが大前提であるが、相続開始直前に於いて、その土地上にある建物等を被相続人が利用していた場合だけでなく、生計一親族が利用していた場合も対象になり、配偶者に至っては利用(住宅の居住)していなくても対象になる。また、この特例の対象宅地等全てに言えることだが、相続開始直前に於いて建物等の利用を要件にすることがあっても所有を要件することはない。

これから具体的な解説に入る。

この宅地等には、用途毎に分類される次の4つの利用区分があり、各区分毎に特例対象となる相続人及び適用要件が定まっている。

特定居住用宅地等

相続開始直前に居住していた人により分かれる次の2種類の宅地等に対して、下表に示す要件を満たす被相続人の親族が相続により取得したものを「特定居住用宅地等」と言い、特例の適用を受けることができる。

被相続人が居住していた建物の宅地等
取得者要件 取得者毎の要件
配偶者 要件なし
配偶者以外の同居していた親族
  • ・居住継続要件 かつ
  • ・保有継続要件
上記以外の親族
  • 「家なき子特例」とも言われ、要件は次のとおり。
  • ●保有継続要件 かつ
  • ●相続開始時に於いて、被相続人若しくは取得者が日本国内に住所がある(なお、取得者は日本国内に住所がなくても日本国籍であればOK)。かつ
  • ●被相続人に配偶者がいない。かつ
  • ●相続開始直前に於いて被相続人と同居している相続人がいない。かつ
  • ●相続開始前3年以内に、次のいづれかの人が所有する建物に居住したことがない。かつ
    •  ・取得者
    •  ・取得者の配偶者
    •  ・3親等内の親族
    •  ・特別の関係にある法人
  • ●土地を取得した人が、被相続人の死亡当時に自分が住んでいる家を過去に所有したことがない。
被相続人が居住していなかったものの生計一親族が居住していた建物の宅地等
取得者要件 取得者毎の要件
配偶者 要件なし
生計一親族
  • 使用貸借要件 かつ
  • ・居住継続要件 かつ
  • ・保有継続要件

特定事業用宅地等

相続開始直前に於いて、被相続人等の内の誰が事業をしていたかにより分かれる次の2種類の宅地等に対して、下表に示す要件を満たす被相続人の親族が相続により取得したものを「特定事業用宅地等」と言い、特例の適用を受けることができる。

なお、この宅地等に該当する事業主は個人である。つまり、被相続人が所有する宅地等上で営業している個人商店をイメージすると分かり易い。また、その個人商店が法人成りすれば、同じ所有者の敷地でありながら当宅地等でなくなり、「 3番目の宅地等 特定同族会社事業用宅地等」に成り得ることになる。

被相続人が事業(但し、貸付事業を除く。)をしていた建物等の宅地等
適用要件
  • ・事業承継要件 かつ
  • ・保有継続要件
生計一親族が事業(但し、貸付事業を除く。)をしていた建物等の宅地等
適用要件
  • 使用貸借要件 かつ
  • 事業継続要件 かつ
  • ・保有継続要件

貸付事業用宅地等

相続開始直前に於いて、被相続人等の内の誰が貸付事業をしていたかにより分かれる次の2種類の宅地等に対して、下表に示す要件を満たす被相続人の親族が相続により取得したものを「貸付事業用宅地等」と言い、特例の適用を受けることができる。

被相続人が貸付事業をしていた建物等の宅地等
適用要件
  • ・事業承継要件 かつ
  • ・保有継続要件
生計一親族が貸付事業をしていた建物等の宅地等
適用要件
  • 使用貸借要件 かつ
  • 事業継続要件 かつ
  • ・保有継続要件

限度面積と減額割合

小規模宅地等の適用要件を満たす宅地等は、利用区分毎に減額できる限度面積と減額割合が定められ、次のとおりである。

宅地等の利用区分 限度面積 減額割合
1番目の宅地等 特定居住用宅地等 330㎡ 80%
2番目の宅地等 特定事業用宅地等 400㎡ 80%
3番目の宅地等 特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
4番目の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

更に宅地等の利用区分間で、次の面積の要件を満たす必要がある。

4番目の宅地等 」が存在しない、又は「4番目の宅地等 」を相続しても敢えて特例の適用を受けない場合

1番目の宅地等 」 ≦ 330㎡ かつ

2番目の宅地等 」 + 「3番目の宅地等 」 ≦ 400㎡ かつ

1番目の宅地等 」 + 「2番目の宅地等 」 + 「3番目の宅地等 」 ≦ 730㎡

4番目の宅地等 」の適用も受ける場合

1番目の宅地等 」 × 200÷330 + (「2番目の宅地等 」 + 「3番目の宅地等 」) × 200÷400 + 「4番目の宅地等 」 ≦ 200㎡

なお、「1番目の宅地等 」に該当する限度面積未満の宅地等が複数あっても、特例の対象にすることができるのはその内の1物件のみであるが、「2番目の宅地等 」~「4番目の宅地等 」に関しては同じ利用区分に該当する宅地等が複数あれば、各利用区分限度面積内で複数物件を特例の対象にすることができる。また、特例対象となる物件の選択は相続人が決定すれば良いので、特例の適用を受ける面積がより大きくなるような選択や評価額の単価が高い宅地等を選択するなりして、最も減額効果が高くなる(納付相続税額が低くなる)よう注意を払う必要がある。

具体的なケース

次は理解を深めるために、具体的な幾つかのケースを想定し、どの利用区分の特例宅地等の対象になるかを解説する。

特定居住用宅地等関連

前提条件として、被相続人が所有していた宅地があり、その上に住宅が建ち、相続開始直前に於いて居住していたのは、配偶者以外の親族とする(被相続人と配偶者は別居)。

ケース1

居住していた親族が宅地を相続し、かつ相続開始直前に於いて被相続人とその親族は、生計を一にしていた場合

下矢印

相続した親族が相続税申告の期限まで引続き居住すれば、「特定居住用宅地等」の対象になる。

ケース2

居住していた親族が宅地を相続し、かつ相続開始直前に於いて被相続人とその親族との間には賃貸借契約があった場合

下矢印

賃貸借であったと言うことは、生計を一にしていなかったことになり、「特定居住用宅地等」の対象にならず。また、相続により居住している親族が宅地の所有者になり、相続前に存在していた賃貸借契約も自然消滅する。つまり被相続人が居住していた親族に対して行っていた貸付事業も承継不可能なので、「貸付事業用宅地等」の対象にもならず。

ケース3

居住したこともない被相続人の配偶者が宅地を相続し、かつ相続開始直前に於いて被相続人と居住していた親族は、生計を一にしていた場合

下矢印

配偶者の場合、適用要件がないので居住していなくても、「特定居住用宅地等」の対象になる。

ケース4

居住したこともない被相続人の配偶者が宅地を相続し、かつ相続開始直前に於いて被相続人と居住していた親族との間には賃貸借契約があった場合

下矢印

賃貸借であったと言うことは、居住していた親族は被相続人と生計を一にしていなかったことになり、「特定居住用宅地等」の対象にならず。しかし、宅地を相続した配偶者が居住している親族との間で、相続申告の期限までに賃貸借を引継ぎ、申告の期限まで賃貸借を行えば、被相続人が行っていた貸付事業を承継したことになり、「貸付事業用宅地等」の対象になる。

ケース5

居住していなかった生計一親族が宅地を相続し、元々居住していた生計一親族と同居した場合

下矢印

宅地を取得した生計一親族は、相続開始直前に於いて居住していなかったので、例え相続後同居しだしても「居住継続要件」を満たしていないことになり、「特定居住用宅地等」の対象にならず。

特定事業用宅地等関連

ケース1

生計一親族が営んでいる事業に従業員として働いていた生計一親族が、相続した場合

下矢印

従業員の生計一親族が事業で利用していた建物等下の宅地等を相続で取得し、その後も事業が継続したとしても、「事業継続要件」を満たしていることにならない。と言うのも、この要件は事業主が取得し、事業を継続した場合であり、事業主でない生計一親族が取得した場合は、要件に当てはまらない。従って、「特定事業用宅地等」の対象にならず。

ケース2

被相続人が営んでいた事業に於いて、継ぐ気のない息子が相続した場合

下矢印

被相続人が営んでいた事業に利用していた建物等下の宅地等を親族(息子)が相続で取得した場合、息子は事業を継ぐ気がないので宅地等を取得したタイミングで事業を廃業すれば、「事業承継要件」を満たしていないことになり「特定事業用宅地等」の対象にならず。しかし、継ぐ気がないものの節税のために(継ぐ気がないのは特例の趣旨に反するので、税務署でその旨の発言はNGかも?)、相続税の申告期限までに引継ぎ、かつ申告期限までその事業を営みさえすれば、その直後廃業し宅地等を売却したとしても、「事業承継要件」及び「保有継続要件」を満たしているので「特定事業用宅地等」の対象になる。

特定同族会社事業用宅地等関連

ケース1

特定同族会社事業用宅地等に要件に於いて、「法人役員要件」のみ満たしていなかった場合

下矢印

特定同族会社事業用宅地等の全ての要件を満たしていないので、当然、当宅地等の特例の対象にならず。ただ、他の要件を満たしているので、宅地等の所有者であった被相続人と建物等を利用していた特定同族会社との間の貸借は、賃貸借だったことになり、被相続人は貸付事業をしていたことになる。従って、宅地等を相続した役員でない親族が、相続の申告期限までに賃貸借を引継ぎ、申告の期限まで賃貸借を行えば、「貸付事業用宅地等」の対象になる。

ケース2

宅地等に対し相続開始前に存在していた賃貸借を、役員が相続で取得したタイミングで使用貸借に変えた場合

下矢印

宅地等を取得した役員がそれまでの賃貸借を引継がず使用貸借に変えたことにより、「賃貸借承継要件」を満たしていないことになり、当宅地等の特例の対象にならず。また、被相続人の貸付事業だったと見ても、「事業承継要件」も満たしていないので、「貸付事業用宅地等」の対象にもならず。

貸付事業用宅地等関連

「貸付事業用宅地」の適用要件は「特定事業用宅地等」と同じなので、要件絡みのことは「特定事業用宅地等」を理解すれば十分との判断から具体的なケースの解説は省略する。

但し、前述したとおり「貸付事業用宅地等」の場合は、「特定事業用宅地等」と違い、相続開始前3年以内に貸付事業を開始したものは対象外になる。

モデルケースによる不動産評価手順

次のモデルケースを使って、相続不動産の評価額算出手順を解説する。

モデルケース

モデルケースの概略図(路線価図)

上図モデルケースの補足説明は、次のとおり。

記号 借地権
割合
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
  • 路線価が設定されている2つの道路に面した角地の物件である。
  • 敷地に面した道路には、路線価(e.g. 「30E」)が設定されてる。
  • 道路上に明記された数値(e.g. 「30E」の「30」)は、㎡当たりの路線価(千円単位)を表している。
  • 道路上に明記された数値直後のアルファベット記号(e.g. 「30E」の「E」)は、借地権割合を示している。記号と借地権割合の関係は右表のとおり。
  • 道路上に明記された数値+アルファベット記号が、上図モデルケースのように何らかのマークで囲まれていなければ、「普通住宅地区」を示す。なお、「地区」に関しては後述「 親階層(青色)の2番目リスト 」を参照されたし。
  • 敷地面積は496㎡〔(7m+13m)×(14m+16m)ー13m×16m÷2〕で、敷地の形は不整形である。
  • 建物は貸家で、固定資産税評価額は500万円である。
  • 敷地は貸付事業用宅地等の対象であり、特例の適用を受ける面積は限度面積(200㎡)とする。

評価手順の解説

不動産の評価作業は、建物は単純だが、土地は面倒である。しかし、面倒でも手順に従って作業すれば良いので難しくはない。以下に、土地と建物の評価手順を解説する。

土地の評価

  1. 評価方法の判断

    本来であれば「評価倍率表」を使って、査定対象の宅地の地域が「路線」と記載されているか否かで、「路線価方式」か「倍率方式」かを判断し、次に「路線価方式」であれば「路線価図」を使って、対象宅地の路線価を求めることになる。ただ、解説の便宜上、上図のモデルケースには既に路線価を設定してあり、「路線価方式」を適用するものとする。

    親階層(青色)の下矢印
  2. 土地の利用状況等により価格への影響度が異なることから、土地の利用状況が概ね同一となる地区を設定されていて、次の7地区が存在する。「親階層(青色)の4番目リスト 」で述べている調整率は、地区毎に固有の調整率が存在するため、評価額を算出する上(調整率を調べる上)で対象物件がどの地区に該当するかを確認しておく必要がある。

    地区の確認方法は、路線価図に記載されている路線価の値を囲むマークで確認できる(路線価図上の地区のマークについては、コチラを参照されたし)。

    • ビル街地区
    • 高度商業地区
    • 繁華街地区
    • 普通商業・併用住宅地区
    • 普通住宅地区
    • 中小工場地区
    • 大工場地区

    なお、上図モデルケースの様に、何のマークにも囲まれていない場合は、「普通住宅地区」を示す。

    親階層(青色)の下矢印
  3. 路線価の確認

    道路上に明記された数値(e.g. 「30E」の「30」)は、㎡当たりの路線価(千円単位)を表している。従って、北側に面した道路は「30E]と明記されているので、路線価は30,000円/㎡となり、東側に面した道路は「25F]と明記されているので、路線価は25,000円/㎡となる。

    親階層(青色)の下矢印
  4. 土地の評価額は、単純に「路線価 × 面積」で算出できるのでなく、路線価に対しその土地に接している道路状況や土地の形状等に応じた調整を行った後に、面積を掛け評価額を算出することになる。調整率は次のものがあるので、適用すべき調整率があれば路線価を調整する必要がある。

    なお、各調整率の値に関しては、国税庁が提供する調整率表(平成30年分以降用)を参照されたし。また、各調整率で求める評価額計算過程の㎡単価は、少数点以下切捨てとなる。

    1. 想定整形地・間口・奥行の計算

      路線価の調整を行うための準備作業として、各道路(路線)に対し想定整形地の面積、間口距離及び奥行距離を求めておく必要がある。

      なお、想定整形地とは道路に接し敷地全体を最小面積で取り囲む長方形(または正方形)であり、間口距離とは原則道路と接する距離であり、奥行距離とは想定整形地の奥行距離を上限とした「敷地面積」÷「間口距離」である。

      モデルケースの場合は次のとおりとなる。

      北側道路側を間口とみた場合

      想定整形地はモデルケース図の敷地の欠けた部分を含めた長方形となり、その面積は

      想定整形地
      の間口
      20m
      ×
      想定整形地
      の奥行
      30m
      想定整形地
      の面積
      600㎡

      間口距離は、敷地が北側道路に接している距離の

      間口距離
      7m

      奥行距離は、次の計算結果が上限値(想定整形地の奥行)を超えているので、上限値の30mとなる。

      敷地面積
      496㎡
      ÷
      間口距離
      7m
      70.85m
      奥行距離
      30m
      東側道路側を間口とみた場合

      東側を間口とみた場合の想定整形地は、このモデルケースでは北側を間口とみた場合と同じ形になり、その面積は

      想定整形地
      の間口
      30m
      ×
      想定整形地
      の奥行
      20m
      想定整形地
      の面積
      600㎡

      間口距離は、敷地が東側道路に接している距離の

      間口距離
      30m

      奥行距離は、次の計算結果が上限値(想定整形地の奥行)以内なので、計算結果の16.5mとなる。

      敷地面積
      496㎡
      ÷
      間口距離
      30m
      奥行距離
      16.5m
      上限値
      20m
      子階層(茶色)の下矢印
    2. 奥行価格補正率と正面路線判定

      奥行が極端に短い場合や長い場合は、利便性が低下するため評価額を下げる補正を行う。この時、使用する調整率が「奥行価格補正率」である。

      また、角地の場合、正面と側方の2つの道路(路線)に面しているから、まずどちらが評価する上で基準となる「正面路線」になるのか判定する必要があり、その判定方法は、敷地に面する各々の道路に対し「路線価 × 奥行価格補正率」の計算をして、金額の高い方の道路となる。

      つまり、モデルケースでは次のとおりとなる。

      北側道路側を間口とみた場合の奥行は30mなので、調整率表から普通住宅地区の調整率は「0.95」である。よって、

      路線価
      30,000円
      ×
      奥行価格
      補正率
      0.95
      調整後の㎡単価
      28,500円

      一方、東側道路側を間口とみた場合の奥行は16.5mなので、調整率表から普通住宅地区の調整率は「1.00」である。よって、

      路線価
      25,000円
      ×
      奥行価格
      補正率
      1.00
      調整後の㎡単価
      25,000円

      以上により、北側道路が東側道路より金額が高いので、北側道路が「正面路線」(奥行価格補正後の㎡単価は、28,500円)となり、東側道路が「側方路線」(奥行価格補正後の㎡単価は、25,000円)となる。

      子階層(茶色)の下矢印
    3. 側方路影響加算率

      正面と側方に道路(路線)がある角地の宅地は、側方路線の存在により利便性が向上するため評価額を上げる調整を行う。この時、使用する調整率が「側方路影響加算率」である。

      子階層(茶色)の2番目リスト 」で求めた正面路線の奥行価格補正後の㎡単価に対し、側方路線の奥行路線補正後の㎡単価に側方路影響加算率を掛けた値を加算する。

      つまり、モデルケースでは次のとおりとなる。

      調整率表から普通住宅地区に於ける「側方路影響加算率」は「0.03」となる。よって、

      奥行価格補正後
      の正面路線
      28,500円
      奥行路線補正後
      の側方路線
      25,000円
      ×
      側方路影響
      加算率
      0.03
      調整後の㎡単価
      29,250円
      子階層(茶色)の下矢印
    4. 二方路線影響加算率

      二方路(敷地が正面と裏面とで路線に接している状態)も2つの道路に接しているので、利便性が向上するため評価額を上げる調整を行う。この時、使用する調整率が「二方路線影響加算率」である。

      なお、モデルケースの場合、二方路でないので調整不要。

      子階層(茶色)の下矢印
    5. 間口の長さに比べ奥行の長さが長すぎると利便性が低下するため、「奥行が長大な宅地」の場合は評価額を下げる調整を行う。この時、使用する調整率が「奥行価格補正率」である。

      また、奥行長大補正率は単独で利用されることはなく、「子階層(茶色)の6番目リスト 」の「間口が狭小な宅地」で利用される。

      なお、普通住宅地区に於ける「奥行が長大な宅地」とは、「奥行きの長さ」÷「間口の長さ」が2以上を指し、モデルケースの場合は4.2(30m÷7m)なので「奥行が長大な宅地」に該当し、調整率表から普通住宅地区に於ける「奥行長大補正率」は「0.94」である。

      子階層(茶色)の下矢印
    6. 間口が狭いと利便性が低下するため、「間口が狭小な宅地」の場合は評価額を下げる調整を行う。この時、使用する調整率が「間口狭小補正率」である。

      なお、「奥行が長大な宅地」場合は、「調整率表の間口狭小補正率」×「奥行長大補正率」が適用する調整率となる。

      普通住宅地区に於ける「間口が狭小な宅地」とは、間口が8m未満を指し、モデルケースの場合は間口が7mなので「間口が狭小な宅地」に該当し、調整率表から普通住宅地区に於ける「間口狭小補正率」は「0.97」となる。

      従って、間口狭小宅地適用の㎡単価は、

      子階層(茶色)の4番目リスト まで調整
      した㎡単価
      29,250円
      ×(
      間口狭小
      補正率
      0.97
      ×
      奥行長大
      補正率
      0.94
      )=
      間口狭小宅地
      適用の㎡単価
      26,670円
      子階層(茶色)の下矢印
    7. 不整形地補正率

      土地の形が不整形であると利便性が低下するため、評価額を下げる調整を行う。この時、使用する調整率が「不整形地補正率」である。

      また、「間口が狭小な宅地」の場合は、「調整率表の不整形地補正率」×「間口狭小補正率」を「不整形地補正率」とする(但し、最小値は、「調整率表の不整形地補正率」の最小値である「0.6」となる)。

      なお、「調整率表の不整形地補正率」を求めるには、以下の手順となる。

      • 「かげ地割合」を次の計算式で求める。

        「かげ地割合」=(「想定整形地の面積」-「不整形地の面積」)÷「想定整形地の面積」

        下矢印
      • 次に、調整率表の「地積区分表」から、敷地面積に該当する地積区分を確認する。
        下矢印
      • 最後に、求めた「かげ地割合」と「地積区分」を元に、調整率表の「不整形地補正率表」を使って不整形地補正率を求める。

      以上により、モデルケースでは次のとおりとなる。

      「かげ地割合」は、

      想定整形地
      面積
      600㎡
      敷地面積
      496㎡
      )÷
      想定整形地
      面積
      600㎡
      かげ地割合
      17.3%

      敷地面積496㎡の地積区分は「A」となり、「調整率表の不整形地補正率」は「0.96」となる。

      次に「間口が狭小な宅地」の「不整形地補正率」は、次の計算式となるが、計算結果が最小値以上なので、計算結果の「0.93」となる。

      調整率表
      不整形地
      補正率
      0.96
      ×
      間口狭小
      補正率
      0.97
      不整形地
      補正率
      0.93
      最小値
      0.6

      最後に、求めた「不整形地補正率」使って路線価を調整することになるが、ここで注意しなければならなのは、「不整形地」と「 子階層(茶色)の6番目リスト 」の「間口狭小な宅地」の両方を適用することができなく、申告者が有利な方を選ぶことになる。よって、ここでは「 子階層(茶色)の6番目リスト 」まで調整した㎡単価を使って調整するのでなく、「 子階層(茶色)の4番目リスト 」まで調整した㎡単価を使って調整をし、その㎡単価と「 子階層(茶色)の6番目リスト 」まで調整した㎡単価と比べて、低い㎡単価を採用すれば良い。

      従って、まず不整形地適用の㎡単価を求め、

      子階層(茶色)の4番目リスト まで調整
      した㎡単価
      29,250円
      ×
      不整形地
      補正率
      0.93
      不整形地適用
      の㎡単価
      27,202円

      次に、間口狭小宅地適用と不整形地適用の㎡単価を比較し、低い単価の間口狭小宅地適用の㎡単価「26,670円」が、「 子階層(茶色)の7番目リスト 」まで調整した㎡単価となる。

      間口狭小宅地
      適用の㎡単価
      26,670円
      不整形地適用
      の㎡単価
      27,202円
      子階層(茶色)の下矢印
    8. 地積(面積)が広すぎると利便性が低下するため、「地積規模の大きな宅地」の場合は評価額を下げる調整を行う。この時、使用する調整率が「規模格差補正率」である。

      • 三大都市圏に於ける500㎡以上の宅地。
      • 三大都市圏以外の地域に於ける1,000㎡以上の宅地。

      従って、モデルケースの地積は496㎡であり地積要件を満たさないので、地積規模の大きな宅地に該当しなく調整不要。

      詳細解説

      この「地積規模の大きな宅地」の評価は、2018年1月1日から適用される相続税改正で新設されたものなので、以下にもう少し詳細に解説しておく。なお、この新設に伴い、従来の「広大地」の評価は廃止となった。

      地積規模の大きな宅地とは

      「地積規模大きな宅地」とは、上記で述べた地積要件を満たした宅地の全てが該当するのでなく、たとえ地積要件を満たしていても次のものは該当しない。

      • 市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号に基づき宅地分譲の開発行為を行うことができる区域を除く。)の宅地
      • 用途地域が工業専用地域の宅地
      • 容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の宅地
      • 大規模工場用地(財産評価基本通達22-2)
      評価対象になる宅地

      地積規模の大きな宅地は路線価地域の宅地だけでなく倍率地域の宅地も評価できるが、両地域の対象範囲には違いがある。倍率地域の宅地は「地積規模大きな宅地」であれば評価対象になるが、路線価地域の宅地は「地積規模大きな宅地」であっても次の地区にある宅地しか評価対象にならない。

      • 普通商業・併用住宅地区
      • 普通住宅地区
      規模格差補正率の求め方

      調整率表の「規模格差補正率を算出する際の表」がら該当地積のⒷとⒸの値を次の計算式に代入して「規模格差補正率」を求める。

      規模格差
      補正率
      =(
      地積
      ×
      +
      )/
      地積
      ×
      0.8

      なお、倍率地域の宅地の場合は、地区区分が存在しないが普通住宅区分の該当地積のⒷとⒸの値を代入して「規模格差補正率」求めれば良い。

      評価方法

      評価方法は、次のように路線価地域と倍率地域で異なる。

      路線価地域の宅地の場合

      地積規模の大きな宅地適用の㎡単価は、次の計算式で求める。

      子階層(茶色)の7番目リスト まで調整
      した㎡単価
      ×
      規模格差補正率
      規模格差適用
      の㎡単価
      倍率地域の宅地の場合

      倍率地域の宅地には路線価そのものがないので、「対象宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の㎡単価」を調整率で補正する前の㎡単価とみなし、普通住宅地区の調整率を使って、路線価方式の本解説従い、「子階層(茶色)の7番目リスト 」まで調整した㎡単価を求めた上で「規模格差補正率」を掛け、規模格差適用の㎡単価を求めれば良い。その後の手順も路線価方式の手順(「子階層(茶色)の9番目リスト 」以降の手順)に従い評価額を算出することになる。

      但し、地積規模大きな宅地であっても、本来の倍率方式で求めた評価額(「対象宅地の固定資産税評価額」×「倍率」)の方が低い額であれば、この倍率方式の評価額を採用すれば良い。

      子階層(茶色)の下矢印
    9. 崖地補正率

      宅地に対しがけ地の割合が多くなるほど利便性が低下するため、評価額を下げる調整を行う。この時、使用する調整率が「崖地補正率」である。

      なお、モデルケースの場合、崖地が存在しないので調整不要。

    親階層(青色)の下矢印
  5. 自用地としての評価額

    親階層(青色)の4番目リスト 」で求めた自用地としての㎡単価に敷地面積を掛けて、自用地としての評価額を算出する。

    自用地㎡単価
    26,670円
    ×
    敷地面積
    496㎡
    自用地評価額
    13,228,320円
    親階層(青色)の下矢印
  6. 貸家建付地としての評価額

    貸家として使用しているので、自用地としての評価額から借地権割合と借家権割合を使って、貸家建付地の評価額を算出する必要がある。

    借地権割合は、路線価図の路線上に明記された路線価(数値)直後のアルファベットで判断できるが、モデルケースでは、2つの道路(路線)に面し、各々のアルファベット(借地権割合)が異なる。この場合は、正面路線(北側道路)の借地権割合を適用すれば良い。従って、借地権割合は、「E」の50%となる。

    借家権割合は、私が住んでいる石川県の値を適用し30%とする(現時点、他の都道府県も30%となっていると思われる)。

    自用地評価額
    13,228,320円
    ×(1-
    借地権
    割合
    50%
    ×
    借家権
    割合
    30%
    )=
    貸家建付地評価額
    11,244,072円
    親階層(青色)の下矢印
  7. 小規模宅地等の特例を適用した評価額

    本敷地は上記「モデルケース」の補足説明で示すとおり、前提として貸付事業用宅地等の対象であり、かつ特例の適用を受ける面積は限度面積の200㎡である。また、減額割合は50%となる。

    従って、小規模宅地等に該当する部分の価額は、

    貸家建付地評価額
    11,244,072円
    ×
    小規模宅地
    等の面積
    200㎡
    ÷
    敷地面積
    496㎡
    小規模宅地等の価額
    4,533,900円

    次に、小規模宅地等の特例により減額される金額は、

    小規模宅地等の価額
    4,533,900円
    ×
    減額割合
    50%
    減額金額
    2,266,950円

    以上により、小規模宅地等の特例を適用した評価額(課税価格に算入する価額)は、

    貸家建付地評価額
    11,244,072円
    減額金額
    2,266,950円
    特例適用後の評価額
    8,977,122円

建物の評価

建物は固定資産税評価額が評価額となとなるが、貸家として利用しているので借家権割合により貸家の評価額(課税価格に算入する価額)は、

固定資産評価額
5,000,000円
×(1-
借家権割合
30%
)=
貸家評価額
3,500,000円

節税対策と効果

最後に、これまでの不動産の評価方法の解説から見えてくる相続税の節税対策と効果について考察する。

新築住宅を購入し、貸家にした場合について

節税対策として良く耳にするのが、不動産を購入し賃貸経営する話である。この時の節税効果を見てみる。

土地の節税効果

土地の節税効果として、次の購入と貸家によるものがある。

購入による減額

一般論で言うと路線価は実勢価格より低いと言われ、また公示価格と実勢価格の関係は地域等によりまちまちであり一概に言えないものの、仮に購入した土地の単価が公示価格と同じであったとする。そうすると、路線価は公示価格の80%程度なので、現金から土地に替えることにより20%減額された評価額になる。

貸家による減額

更に、貸家にすることにより次の節税効果がある。

貸家建付地

私の住んでいる石川県小松市では、借地権割合の殆どが「E」の50%で、脇道に入ると「F」の40%が多少ある程度であり、また借家権割合は30%なので、大部分のケースは15%(50%×30%)減額された評価額になる。

参考までに、都市部の住宅地に於いて私の簡易的調査結果によると、目安として名古屋は15%、大阪は18%、東京は18or21%の減額になるケースが多い(平成28年時点)。

貸付事業用宅地等

小規模宅地等の特例に於ける貸付事業用宅地等の適用を受けると土地の200㎡までは50%減額された評価額になる。

以上により、敷地が200㎡以下で敷地全体を貸付事業用宅地等の適用を受けるとすると、課税価格に算入する価額は実勢価格の34%(80%×85%×50%)となる。

建物の節税効果

建物の節税効果として、次の購入と貸家によるものがある。

購入による減額

新築の場合、固定資産税評価額は実勢価格より低く、木造住宅の場合は実勢価格の40%程度が固定資産税評価額と判断していて60%の減額になる。その判断根拠は次のとおり。

私は石川県小松市周辺のことしか分からないが、税務課が求める新築時の固定資産税評価額は、木造住宅建築費として坪単価30万円をベースにし、それに補正率(全国共通の80%×地域毎に異なる85%=68%)を掛けて算出している。一方、平成28年度に於ける不動産流通推進センター発表の石川県の木造住宅建築費坪単価は、500,826円である。従って、実勢価格の40%(30万円×68%÷約50万円)と判断できる。

なお、この40%の評価は新築時しか当てはまらない。中古住宅の平均的な評価として捕えた場合、根拠は割愛するが、年数が経つにつれて価格差割合は縮小していき耐用年数を経過した頃には、ほぼ同じ評価額になると判断ている。よって、中古住宅を購入した場合は、60%も減額されないとみるべきである。

貸家による減額

更に、貸家にすることにより、借家権割合により30%減額された評価額になる。

以上により、課税価格に算入する価額は実勢価格の28%(40%×70%)となる。

更に、借入れをして購入していれば、相続時の借入残高はマイナス財産として課税価格に反映でき、節税効果がある。

ただ、このような節税効果としてのメリットを見ると、現金から(更に借入れまでして)不動産に替え賃貸経営をすることは、相続対策として非常に有効な手段と思うかもしれないが、一方で不動産に替えることによる次のデメリットもあるので、各自の状況から包括的に検討すべきである。

即換金が困難

買い手が見つかるまで、相当な期間を要す。状況によっては、何年経っても買い手が見つからなく、換金できないことも有り得る。

相続時、分割が困難

分割を諦め相続人の一人が取得するか、共有を覚悟しておいた方が良い。

利子の発生(借入れ時)

借入れをして不動産購入していれば、利子を支払い続けなければならない。

資産価値が年々下落

地価はこれまでのところ長年下落傾向であり、建物も古くなって行くので価値も年々下落していく。

なお、上記解説で新築すれば60%減額に伴う節税効果があると述べたが、これは新築時にタイミング良く相続が発生すればの話である。幸運にも(あるいは「不幸」にも)、新築建物の所有者が生き続ければ、その建物の価値が下落し続け、つまり所有者の資産価値が下落し続けることになる。

賃貸の空きリスク

国内の人口は減少している状況の中、平成27年の相続税改正の適用により相続税の納付の可能性が高まり、相続税対策として建物を建て賃貸経営に乗り出す人が増えた結果、供給過剰による空きが増えている。

以上を踏まえると、不動産の購入までして賃貸経営に乗り出すか否かは、相続対策よりは収益性に重点を置くべきである。

小規模宅地等の特例について

配偶者には「配偶者の税額軽減」があるため、配偶者以外の相続人が相続税の納付が必要でも、配偶者は納付不要のケースが多い。従って、このようなケースでは、小規模宅地等の特例の対象となる土地は、特例の適用を受けなくても相続税納付不要な配偶者より、相続税の納付が必要な相続人が取得した方が、その人の課税価額を減額できた分、その人の相続税に反映されて行くので節税効果が大きい。

そうは言っても、世の中には色んなケースがあり、上記のような状況でも敢えて小規模宅地等の特例の対象となる土地を納付不要な配偶者が取得することも十分有り得る。この場合配偶者の立場から見ると、小規模宅地等の特例の適用を受けるなくても納付不要なので、わざわざ小規模宅地等の特例の適用を受けるための申請手続きを行う必要がないように思う。しかし、他の納付必要な相続人のことを考えれば、配偶者は申請手続きを行うべきである。なぜなら、配偶者が小規模宅地等の特例の適用を受けることにより、次の流れの結果、配偶者以外の節税効果があるからである。

  • 配偶者の課税価格が減額

    下矢印
  • 課税価格の合計額(全相続人の課税価格の合計額)が減額

    下矢印
  • 相続税の総額(全相続人の相続税の合計額)が下がる

    下矢印
  • 納付必要な相続人の相続税額が下がる

また、上記のケース(配偶者は納付不要、その他相続人は納付必要)で、納付が必要な相続人は子供2人(息子と娘)だとする。小規模宅地等の特例の対象となる土地を配偶者又は息子のどちらかが取得する場合、娘にとって、どちらが取得した方が節税効果が大きいだろうか?

この場合、配偶者が取得するより息子が取得した方が、全相続人の(税額控除後の)納付税額の合計額は小さくなるものの、娘の納付税額は、どちらが取得しようと節税効果の大きさは変わらない。なぜなら、どちらが取得しようと取得した相続人の課税価格の減額金額は同じなので、課税価格の合計額も同じになり、(税額控除前の)相続税の総額も同じだからである。

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written on Apr.16,2015