小規模宅地等の特例の詳細解説

はじめに...本解説ページは、「相続不動産の評価方法」内で述べている「小規模宅地等の特例の概要」では物足りない方のために、もう少し掘り下げた詳細解説である。

なお、本特例解説のベースになっているは、税務署が提供している冊子「相続税の申告のしかた」であるが、冊子を最初読んだ時、何を述べたいのか私自身が理解できなく、税務署に質問をし、それなりに理解した上で私なりに分かり易く纏めたのが本特例解説である。従って、本解説には誤りがないと思っているものの、気になる方は「相続税の申告のしかた」(平成30年分用)のP.16(「(4) 小規模宅地等の特例」)以降の文面を参照されたし。

本解説は次の構成になっている。

予備知識」、「利用区分毎の要件」、「限度面積と減額割合」、「具体的なケース

予備知識

この後の解説を読むに当たり、予備知識として次の語句の意味を頭に入れておくと読み易くなる。

建物等*

建物又は構築物のこと。構築物の例として、駐車場のアスファルト舗装やフェンス等が挙げられる。

宅地等

建物等の敷地となっている土地又は土地の権利(借地権等)である。よって、建物の敷地だけでなく、アスファルト舗装やフェンス等の構築物がある駐車場の敷地も対象である。

小規模宅地等

被相続人が所有していた宅地等に対し、評価額を減額できる一定面積までの土地のこと。

親族

配偶者、6親等以内の血族及び3親等以内の姻族のこと。

生計を一にする

『せいけいをいつにする』と読む。

同居している(但し、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は対象外)、もしくは別居であっても送金を行なうなど、生活費に一体性が見られる状態のこと。

生計一親族*

被相続人から見た生計を一にする親族のこと。

被相続人等

被相続人又は、相続開始直前に於ける生計一親族のこと。

一定の法人

相続開始直前に於いて、被相続人及び被相続人の親族等が、発行株式の総数又は出資の総額の50%超えを有している法人のこと。簡単に言えば同族会社の一種。

貸付事業

不動産貸付業、駐車場業、駐輪場業のこと。なお、事業と称するほどでなくても、対価を得て継続的に行っていれば対象である。

賃貸借*

対価(賃料)が発生する貸借のこと。

対価が発生しても、相当な対価でなければ使用貸借と見なされる可能性有り。例えば、固定資産税その他必要経費程度の対価では、相当な対価と見なされない。

賃貸借承継要件*

特例の適用を受ける要件の1つで、相続開始直前に於いて、宅地等所有者と建物等利用者間の貸借が賃貸借であり、相続人が相続税の申告期限までに賃貸借を引継ぎ、かつ申告期限まで賃貸借を行っていること。

参考まで、建物等利用者が宅地等の所有者でない場合、両者の間で貸借が発生していることになり、その場合の貸借の種類を要件にしている。例えば、建物の所有者が土地の所有者である場合、建物利用者はその建物に対し相当な対価(家賃)を支払っていれば賃貸借になり、また建物の所有者が建物利用者である場合、建物利用者はその土地に対し相当な対価(地代)を支払っていれば賃貸借になる。

使用貸借要件*

特例の適用を受ける要件の1つで、相続開始直前に於いて、宅地等所有者と建物等利用者(貸付事業の場合は、建物等を貸付けている者)間の貸借が使用貸借であること。

参考まで、建物等利用者が宅地等の所有者でない場合、両者の間で貸借が発生していることになり、その場合の貸借の種類を要件にしている。例えば、建物の所有者が土地の所有者である場合、建物利用者はその建物に対し相当な対価(家賃)を支払っていなければ使用貸借になり、また建物の所有者が建物利用者である場合、建物利用者はその土地に対し相当な対価(地代)を支払っていなければ使用貸借になる。

居住継続要件*

特例の適用を受ける要件の1つで、相続開始直前から居住していた対象宅地上の建物に、相続税の申告期限まで引続き居住していること。

事業承継要件

特例の適用を受ける要件の1つで、対象宅地等の上で営まれていた(あるいは宅地等に係る)被相続人の事業を相続税の申告期限までに引継ぎ、かつ申告期限までその事業を営んでいること。

事業継続要件

特例の適用を受ける要件の1つで、相続開始直前から対象宅地等の上で営まれていた(あるいは宅地等に係る)事業を、同一事業主が相続税の申告期限まで引続きその事業を営んでいること。

保有継続要件

特例の適用を受ける要件の1つで、相続税の申告期限まで対象宅地等を所有していること。つまり申告期限までに、遺産分割が完了しかつ売却していない必要がある。

法人役員要件

特例の適用を受ける要件の1つで、相続税の申告期限に於いて、宅地等の取得者が対象法人の役員であること。

利用区分毎の要件

特例の適用を受けられる宅地等は、被相続人が所有していた宅地等であることが大前提であるが、相続開始直前に於いて、その土地上にある建物等を被相続人が利用していた場合だけでなく、生計一親族が利用していた場合も対象になり、配偶者に至っては利用(住宅の居住)していなくても対象になる。また、この特例の対象宅地等全てに言えることだが、相続開始直前に於いて建物等の利用を要件にすることがあっても所有を要件することはない。

これから具体的な解説に入る。

この宅地等には、用途毎に分類される次の4つの利用区分があり、各区分毎に特例対象となる相続人及び適用要件が定まっている。

特定居住用宅地等

相続開始直前に居住していた人により分かれる次の2種類の宅地等に対して、下表に示す要件を満たす被相続人の親族が相続により取得したものを「特定居住用宅地等」と言い、特例の適用を受けることができる。

被相続人が居住していた建物の宅地等
取得者要件 取得者毎の要件
配偶者 要件なし
配偶者以外の同居していた親族
  • レベル4 居住継続要件 かつ
  • レベル4 保有継続要件
上記以外の親族
  • 「家なき子特例」とも言われ、要件は次のとおり。
  • レベル4 保有継続要件 かつ
  • レベル4 相続開始時に於いて、被相続人若しくは取得者が日本国内に住所がある(なお、取得者は日本国内に住所がなくても日本国籍であればOK)。かつ
  • レベル4 被相続人に配偶者がいない。かつ
  • レベル4 相続開始直前に於いて被相続人と同居している相続人がいない。かつ
  • レベル4 相続開始前3年以内に、次のいづれかの人が所有する建物に居住したことがない。かつ
    •  レベル5 取得者
    •  レベル5 取得者の配偶者
    •  レベル5 3親等内の親族
    •  レベル5 特別の関係にある法人
  • レベル4 土地を取得した人が、被相続人の死亡当時に自分が住んでいる家を過去に所有したことがない。
被相続人が居住していなかったものの生計一親族が居住していた建物の宅地等
取得者要件 取得者毎の要件
配偶者 要件なし
生計一親族
  • レベル4 使用貸借要件 かつ
  • レベル4 居住継続要件 かつ
  • レベル4 保有継続要件

特定事業用宅地等

相続開始直前に於いて、被相続人等の内の誰が事業をしていたかにより分かれる次の2種類の宅地等に対して、下表に示す要件を満たす被相続人の親族が相続により取得したものを「特定事業用宅地等」と言い、特例の適用を受けることができる。

なお、この宅地等に該当する事業主は個人である。つまり、被相続人が所有する宅地等上で営業している個人商店をイメージすると分かり易い。また、その個人商店が法人成りすれば、同じ所有者の敷地でありながら当宅地等でなくなり、「 3番目の宅地等 特定同族会社事業用宅地等」に成り得ることになる。

被相続人が事業(但し、貸付事業を除く。)をしていた建物等の宅地等
適用要件
  • レベル4 事業承継要件 かつ
  • レベル4 保有継続要件
生計一親族が事業(但し、貸付事業を除く。)をしていた建物等の宅地等
適用要件
  • レベル4 使用貸借要件 かつ
  • レベル4 事業継続要件 かつ
  • レベル4 保有継続要件

貸付事業用宅地等

相続開始直前に於いて、被相続人等の内の誰が貸付事業をしていたかにより分かれる次の2種類の宅地等に対して、下表に示す要件を満たす被相続人の親族が相続により取得したものを「貸付事業用宅地等」と言い、特例の適用を受けることができる。

被相続人が貸付事業をしていた建物等の宅地等
適用要件
  • レベル4 事業承継要件 かつ
  • レベル4 保有継続要件
生計一親族が貸付事業をしていた建物等の宅地等
適用要件
  • レベル4 使用貸借要件 かつ
  • レベル4 事業継続要件 かつ
  • レベル4 保有継続要件

限度面積と減額割合

小規模宅地等の適用要件を満たす宅地等は、利用区分毎に減額できる限度面積と減額割合が定められ、次のとおりである。

宅地等の利用区分 限度面積 減額割合
1番目の宅地等 特定居住用宅地等 330㎡ 80%
2番目の宅地等 特定事業用宅地等 400㎡ 80%
3番目の宅地等 特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
4番目の宅地等 貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

更に宅地等の利用区分間で、次の面積の要件を満たす必要がある。

4番目の宅地等 」が存在しない、又は「4番目の宅地等 」を相続しても敢えて特例の適用を受けない場合

1番目の宅地等 」 ≦ 330㎡ かつ

2番目の宅地等 」 + 「3番目の宅地等 」 ≦ 400㎡ かつ

1番目の宅地等 」 + 「2番目の宅地等 」 + 「3番目の宅地等 」 ≦ 730㎡

4番目の宅地等 」の適用も受ける場合

1番目の宅地等 」 × 200÷330 + (「2番目の宅地等 」 + 「3番目の宅地等 」) × 200÷400 + 「4番目の宅地等 」 ≦ 200㎡

なお、「1番目の宅地等 」に該当する限度面積未満の宅地等が複数あっても、特例の対象にすることができるのはその内の1物件のみであるが、「2番目の宅地等 」~「4番目の宅地等 」に関しては同じ利用区分に該当する宅地等が複数あれば、各利用区分限度面積内で複数物件を特例の対象にすることができる。また、特例対象となる物件の選択は相続人が決定すれば良いので、特例の適用を受ける面積がより大きくなるような選択や評価額の単価が高い宅地等を選択するなりして、最も減額効果が高くなる(納付相続税額が低くなる)よう注意を払う必要がある。

具体的なケース

次は理解を深めるために、具体的な幾つかのケースを想定し、どの利用区分の特例宅地等の対象になるかを解説する。

特定居住用宅地等関連

前提条件として、被相続人が所有していた宅地があり、その上に住宅が建ち、相続開始直前に於いて居住していたのは、配偶者以外の親族とする(被相続人と配偶者は別居)。

ケース1

居住していた親族が宅地を相続し、かつ相続開始直前に於いて被相続人とその親族は、生計を一にしていた場合

下矢印

相続した親族が相続税申告の期限まで引続き居住すれば、「特定居住用宅地等」の対象になる。

ケース2

居住していた親族が宅地を相続し、かつ相続開始直前に於いて被相続人とその親族との間には賃貸借契約があった場合

下矢印

賃貸借であったと言うことは、生計を一にしていなかったことになり、「特定居住用宅地等」の対象にならず。また、相続により居住している親族が宅地の所有者になり、相続前に存在していた賃貸借契約も自然消滅する。つまり被相続人が居住していた親族に対して行っていた貸付事業も承継不可能なので、「貸付事業用宅地等」の対象にもならず。

ケース3

居住したこともない被相続人の配偶者が宅地を相続し、かつ相続開始直前に於いて被相続人と居住していた親族は、生計を一にしていた場合

下矢印

配偶者の場合、適用要件がないので居住していなくても、「特定居住用宅地等」の対象になる。

ケース4

居住したこともない被相続人の配偶者が宅地を相続し、かつ相続開始直前に於いて被相続人と居住していた親族との間には賃貸借契約があった場合

下矢印

賃貸借であったと言うことは、居住していた親族は被相続人と生計を一にしていなかったことになり、「特定居住用宅地等」の対象にならず。しかし、宅地を相続した配偶者が居住している親族との間で、相続申告の期限までに賃貸借を引継ぎ、申告の期限まで賃貸借を行えば、被相続人が行っていた貸付事業を承継したことになり、「貸付事業用宅地等」の対象になる。

ケース5

居住していなかった生計一親族が宅地を相続し、元々居住していた生計一親族と同居した場合

下矢印

宅地を取得した生計一親族は、相続開始直前に於いて居住していなかったので、例え相続後同居しだしても「居住継続要件」を満たしていないことになり、「特定居住用宅地等」の対象にならず。

特定事業用宅地等関連

ケース1

生計一親族が営んでいる事業に従業員として働いていた生計一親族が、相続した場合

下矢印

従業員の生計一親族が事業で利用していた建物等下の宅地等を相続で取得し、その後も事業が継続したとしても、「事業継続要件」を満たしていることにならない。と言うのも、この要件は事業主が取得し、事業を継続した場合であり、事業主でない生計一親族が取得した場合は、要件に当てはまらない。従って、「特定事業用宅地等」の対象にならず。

ケース2

被相続人が営んでいた事業に於いて、継ぐ気のない息子が相続した場合

下矢印

被相続人が営んでいた事業に利用していた建物等下の宅地等を親族(息子)が相続で取得した場合、息子は事業を継ぐ気がないので宅地等を取得したタイミングで事業を廃業すれば、「事業承継要件」を満たしていないことになり「特定事業用宅地等」の対象にならず。しかし、継ぐ気がないものの節税のために(継ぐ気がないのは特例の趣旨に反するので、税務署でその旨の発言はNGかも?)、相続税の申告期限までに引継ぎ、かつ申告期限までその事業を営みさえすれば、その直後廃業し宅地等を売却したとしても、「事業承継要件」及び「保有継続要件」を満たしているので「特定事業用宅地等」の対象になる。

特定同族会社事業用宅地等関連

ケース1

特定同族会社事業用宅地等に要件に於いて、「法人役員要件」のみ満たしていなかった場合

下矢印

特定同族会社事業用宅地等の全ての要件を満たしていないので、当然、当宅地等の特例の対象にならず。ただ、他の要件を満たしているので、宅地等の所有者であった被相続人と建物等を利用していた特定同族会社との間の貸借は、賃貸借だったことになり、被相続人は貸付事業をしていたことになる。従って、宅地等を相続した役員でない親族が、相続の申告期限までに賃貸借を引継ぎ、申告の期限まで賃貸借を行えば、「貸付事業用宅地等」の対象になる。

ケース2

宅地等に対し相続開始前に存在していた賃貸借を、役員が相続で取得したタイミングで使用貸借に変えた場合

下矢印

宅地等を取得した役員がそれまでの賃貸借を引継がず使用貸借に変えたことにより、「賃貸借承継要件」を満たしていないことになり、当宅地等の特例の対象にならず。また、被相続人の貸付事業だったと見ても、「事業承継要件」も満たしていないので、「貸付事業用宅地等」の対象にもならず。

貸付事業用宅地等関連

「貸付事業用宅地」の適用要件は「特定事業用宅地等」と同じなので、要件絡みのことは「特定事業用宅地等」を理解すれば十分との判断から具体的なケースの解説は省略する。

但し、前述したとおり「貸付事業用宅地等」の場合は、「特定事業用宅地等」と違い、相続開始前3年以内に貸付事業を開始したものは対象外になる。

last update on

written on Apr.16,2015