測りに乗った老夫婦と硬貨

平成27年1月1日から適用された相続税制の改正により、これまで相続税の納付に縁のないと思われた家庭でも相続税を納付しなければならない可能性が出てきている。
と言うのも、
改正前の基礎控除額は、「5000万円 + 1000万円 × 法定相続人の人数」であったが、
改正後の基礎控除額は、「3000万円 + 500万円 × 法定相続人の人数」と大幅に下がったからである。

大雑把な言い方をすれば、相続財産の総額が基礎控除額以下であれば相続税の申告及び相続税の納付が不要であるが、超えれば必要になってくる。

相続税の申告の期限は、被相続人が死亡した翌日から10ヵ月後と、それなりの期間があるものの、相続税の申告は一生の中で滅多に経験するものでないので、相続人自身で申告手続きをせず、税理士に依頼しているのが現状である(国税庁の調査によると、9割が税理士に頼んでいる)。
税理士に依頼した場合の報酬は、税理士により金額が変わるものの、目安として相続財産評価額の0.5%から1%のようである。つまり相続財産が高額になる程、報酬額は高額になって行く。相続税を納付しなければならない人の相続財産から考えると、税理士の報酬は比較的低いケースでも数十万円になることが見えてくる。
容易に換金できる財産を十分相続したのなら、相続税や税理士報酬の支払いに困らないかもしれないが、そうでなければ税理士報酬も馬鹿にならない。

私は税理士ではないので相続税の知識が殆どなかったものの、以前ある人に依頼され、その方の相続税申告の手続きを行ったことがある。だから、税理士に依頼しなくても、税務署に置いてある冊子の「相続税の申告のしかた」や国税庁などのサイトから知識を得て行けば、自分で申告は可能である。申告まで10ヶ月の期間があるので、それなりの時間を取れる人であれば、自分で申請することを勧める。

ちなみに私が相続税申告を手続きを行った時、作業最初の段階で依頼し方には大雑把に算出した相続税額を伝えてあった。その方は、伝えた額の現金を持ち合わせていなく、また延納もしたくなかったので、金融機関から融資を受けて相続税を納付することに決め、金融機関と融資の調整を行っていた。
ところが、その方が相続する土地の詳細な調査をしていくと、2つの土地に対する路線価のミスを見つけ、税務署に指摘したところ、1つは土地評価額に殆ど影響がなかったものの、もう1つは路線価図に明記されている路線価の半額で評価すれば良いことになった。半額評価の土地の面積は大きかったので、相続財産評価額が当初の概算より相当下がり、それに伴い納付すべき相続税額が大幅に下がることになった。これにより、その方は金融機関から融資を受けなくても、延納もせず相続税を納付できるようになった。
このようなケースは希なことかもしれないが、路線価図を基に機械的に相続税を算出していては、決して見つけることができなかった誤りである。このような誤りに気付くのは、何とか相続税を下げることができないかと思って調査している人である。つまり、赤の他人の税理士より相続税を支払う本人の方が気付く可能性が高いと思っていて、このことも私が自分で申告をすることを勧める理由である。

なお、相続の基礎、不動産の評価方法や相続税の算出方法の知識を得たい方は「相続税の用語解説」を、申告する必要があるか否かや大よその相続税額を知りたい方は便利ツールの「相続税額」を参照されたし。